2016.11.19
貨物自動車運送事業における過労運転防止及び荷役作業による労働災害防止について(近畿運輸局)
貨物自動車運送事業における過労運転防止及び荷役作業
による労働災害防止について(近畿運輸局)
平素は、運輸行政及び労働行政の推進に御理解と御協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、貨物自動車運送事業(トラック運送事業)は、国内の産業を支える基幹的な事業の一つとして、国民の生活に欠かせない役割を担っています。
しかし、その反面、トラック運送事業においては、
・労働時間が他産業と比較して長時間であり、過労運転が交通事故の要因の一つともなっている。
・労働災害の約6割が荷役作業中に発生し、その中でも最も多くを占める墜落・転落災害の約7割が、荷主等の配送先で発生している傾向が継続している。
という現状もみられます。
これらの要因として集荷・配達時間等発注条件の制約や多重的な請負構造があることも指摘されており、トラック運送事業者のみの努力で改善することが困難な要因もあることから、近畿運輸局及び近畿2府4県各労働局では平成18年度から荷主の皆様の発注条件等の面での十分な配慮について御理解と御協力をお願いしているところですが、平成27年度からは、学識経験者、荷主、トラック運送事業者、行政機関(国土交通省、厚生労働省)などにより構成される「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」が中央及び各都道府県に設置され、関係者が一体となって長時間労働の抑制とその定着を図っていくこととしています。
同協議会においては、本年度はトラック輸送の実態調査の検証結果を受けて、パイロット事業(実証実験)の実施を開始し、平成29年度以降の長時間労働改善ガイドラインの策定に向けていく計画となっており、これら計画の円滑な推進のためには引き続き荷主の皆様の御協力が不可欠となります。
以上のような状況を斟酌いただき、別添の要請事項につきまして、特段の御理解と御協力を賜ると共に貴団体傘下の会員各社への周知方、よろしくお願い申し上げます。
併せて、同封のリーフレット「~荷主の皆様へ ご存知ですか?トラックドライバーの労働時間のルールを~」の周知につきましても、格段の御配意を賜りますようお願い申し上げます。
要請事項
1 トラック運転者の過労運転防止のために
運送の発注にあたっては、安全で適切な運行計画を立てることができるように発注条件をあらかじめ明確にしたものとするとともに、次の事項に配慮したものとしてい
ただくこと。
(1) 発注条件の明示
急な発注条件の変更がないようにしていただくこと。
(2) 無理のない到着時間の設定
① 安全な運行を確保するためにトラック運転者の休憩時間、運行経路の渋滞等を考慮した到着時間を設定していただくこと。
② 到着時間の遅延が見込まれる場合、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」といいます(資料2参照)。)等を遵守した安全運行が確保されるよう到着時間の再設定、ルート変更を行うなど柔軟に対応していただくこと。
(3) 荷受け、積卸し時間の設定
① 荷待ち時間及び積卸し時間等の手待ち時間を少なくすることができるように、荷受け、積卸しの時間帯を設定していただくこと。
② 積込み・積卸し作業の遅延により予定時間に出発できない場合、到着時間の再設定等を行うとともに、トラック車両を荷主の敷地内で待機できるようにしていただくこと。
(4) トラック運送事業者の選定
トラック事業者の選定にあたっては、「改善基準告示」等の遵守、「社会保険」や「労働保険」に加入していることなど、法令を遵守している事業者であることを前提に選定していただくこと。
なお、トラック運送事業には「安全性優良事業所の認定(G マーク)制度」がありますので、業者選定の際の参考の一つにしてください。
(5) 適切な運賃等の収受(燃料サーチャージ制の導入等)
運送契約においては、安全で安定した輸送を確保するため、「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」及び「トラック運送事業における燃料サーチャージ制緊急ガイドライン」の趣旨を踏まえ、輸送原価が反映された運賃額並びに燃料上昇分を転嫁するための燃料サーチャージ制の導入を促進していただき、また、契約条件等について書面化する等、より良い信頼関係の中で、運送契約を締結していただくこと。
2 労働災害の防止のために
(1) 安全管理体制
荷主等の安全管理者等の中から、荷役災害防止の担当者を指名していただき、トラック運転者が行う荷役作業の連絡調整や巡視を行っていただくこと。
なお、連絡調整については、資料3の裏面「安全作業連絡書」を活用してください。
(2) 墜落防止対策
昇降設備、安全帯取付設備(親綱、フック等)の設置等プラットホーム、荷台における墜落・転落防止のための施設・設備を用意していただくこと。
(3) フォークリフトによる労働災害防止対策
① フォークリフト使用のルール(制限速度、安全通路等)を定めて、見やすい場所に掲示していただくこと。
② 通路の死角にはミラーを設置いただくこと。
③ フォークリフト走行場所と歩行通路を区分していただくこと。
3 トラック運送事業者との適正取引のために
(1) 荷主勧告制度
荷主がトラック事業者に対して、労働時間等のルールが守れなくなる行為
① 非合理な到着時間の設定
② 手待ち時間の恒常的な発生
③ やむを得ない遅延に対するペナルティの設定
④ 積込み前に貨物量を増やすような急な依頼
等を強要すると、荷主勧告の対象となり、荷主名が公表される場合があることに留意いただくこと。
(2) 物流特殊指定における禁止行為
独占禁止法第2条第9項第6号による告示「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(物流特殊指定)に該当する行為
① 代金の支払遅延
② 代金の減額
③ 買いたたき
④ 物の購入強制・役務の利用強制
⑤ 割引困難な手形の交付
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請
⑦ 不当な給付内容の変更及びやり直し
⑧ 要求拒否に対する報復措置
⑨ 情報提供に対する報復措置
は、独占禁止法違反となり、公正取引委員会による排除措置命令や警告・注意等の対象となることに留意いただくこと。
参考
1.安全性優良事業所の認定(G マーク)について
(http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000013.html)
2.「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」
(http://www.mlit.go.jp/common/001069396.pdf)
3.「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」
(http://www.mlit.go.jp/common/000211177.pdf)
4.「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」
(http://www.mlit.go.jp/common/000021502.pdf)
5.「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」
(http://www.mlit.go.jp/common/001025206.pdf)
6.「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」
(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040330-10.pdf)
7.「交通労働災害防止のためのガイドライン」
(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/130912-01-all.pdf)
8.「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」
(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/130605-2.html)
【問い合わせ先】
近畿運輸局 自動車監査指導部
電話番号06-6949-6448
(担当:衣川、小田)
大阪労働局労働基準部 監督課・安全課
電話番号06-6949-6490
(担当:前村、加藤、森)
・貨物自動車運送事業における過労運転防止及び荷役作業による労働災害の防止について(協力要請)(PDF 220KB)